いま、この瞬間に

姪は、眠るくらいなら踊っていたかった。

もう遅いから寝よう、と言われて泣いた。

明日もできるよ、と大人たちは言った。

でも、姪にとって、踊りたいのは明日ではなかった。

音楽が流れている、いまだった。

床を踏み、腕を振り、何度も同じところで回った。
うまくできているかなんて、気にしていなかった。

ただ、踊っていた。

かっこいいと思った。

少し、羨ましかった。

次に会ったとき、ダンスの話をした。

姪は、もうバスケットボールに夢中だった。

踊っていたことを、忘れたような顔をしていた。

さらに、羨ましくなった。

あれほど手放したくなかったものを、
飽きたのではなく、終えたのでもなく、
ただ次の好きなものへ走っていける。

大人になると、好きだったものを手放すのが怖くなる。

続けなければ、あの時間が無駄になる気がする。
形にしなければ、本気ではなかったと言われる気がする。

だから、もう心が動いていなくても抱えてしまう。

あるいは、失敗する前に好きではなかったことにする。

姪は違った。

踊る夜は、踊ることに全部を使った。
ボールを追う日は、昨日の自分を連れてこなかった。

どちらも嘘ではなかった。

いま、この瞬間に全力でいることは、
ずっと同じものを好きでいることではないのかもしれない。

変わってもいい。
忘れてもいい。

あの夜、確かに踊っていたことは、
誰にも消せないのだから。

いま、この瞬間に—静川朔