灯りの数だけ

知らない街を、通り過ぎた。

窓の外に、灯りが並んでいた。
一つひとつの光に、命がある。
生活がある。
悩みがある。

それだけの数の世界が、いまこの瞬間も、続いている。

自分の世界が、どれだけ小さいか。

そう気づくたびに——
不思議と、心が落ち着く。

小さい、ということは——
いま見えている世界が、全部じゃないということだ。

いま正しいと思っていることも。
いま大事だと思っているものも。
いま抱えている悩みも。

国が違えば、当たり前じゃない。
街が違えば、特別じゃない。
人が違えば、正解じゃない。

それが、救いだと思っている。

人の営みの中で、自分の小ささに救われたことが——
何度も、ある。

あなたが必死に守っているものが、
どこかの街では、誰も気にしていない。
あなたが恥ずかしいと思っていることが、
どこかの国では、誇りになっている。

だから——

少しだけ、出てみたい。

いまある世界から。
いまいる場所から。
いま正しいと思っている世界から。

少しだけでいい。
全部捨てなくていい。
遠くに行かなくていい。

ただ——少しだけ。

灯りの数だけ—静川朔